二人称の夏
《 大船渡市 / 魚市場・展望デッキから 》
仕事の都合から3年ぶりに沿岸方面に出かけた。
数えきれない犠牲者数が出た事は記憶していても
時間の経過と共に、各地の事情は遥か彼方へ流れていく。
「語り部」の三好さん、72歳。
母を目前で、親友が一瞬で、我が子が、恩師が、兄妹が一瞬で消えて、
フィクションではないんです、と。
移動しながら90分、いっときも休む事なく語ってくれた。
陸前高田市では、1790人が犠牲になったが依然不明者が20数名いると聞いた。
大型クレーンや重機、工事関係車で静かな賑わいはあれど、
すっかり草が繁茂し、瓦礫も一部を残し片付けられていた市内は、
かつては住宅地、市役所や公民館だったと聞いても分からない。
「皆さん想像つかないと思います」
展望デッキから見る限り、いつもの爽やかな沿岸の夏だ。
カモメが空を飛び、海面に漂う船や漁をする人たちが歩いている。
被災地は皮肉にも「あの日」を語る観光地に変わった。
日々更新されていく事柄だけど、僕は忘れないで伝えていく
絶望のとなりに
だれかが そっと腰かけた
絶望は
「あなたはいったい 誰ですか」
となりのひとは 微笑んで
「私の名前は 希望です」
/希望の歌(やなせたかし)
曲がりそうになっていた背中の芯が、すっと伸び
目の前の空間に思わず両手をかざしてみたくなるような感覚。
空を見上げ、自由に飛び交うカモメを眺めてしまった。